胃潰瘍・胃炎がある人の痛み止め|胃が荒れにくい選び方を薬剤師が解説

胃の不調がある方が薬剤師に痛み止めの相談をするイラスト 持病がある方の市販薬選び

この記事を読んでほしい人 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃炎・逆流性食道炎の治療中または既往がある方で、市販の痛み止めを選びたいと考えている方


冒頭3行結論

買うなら アセトアミノフェン単剤を優先する。どうしてもNSAIDsを検討する場合は自己判断せず、薬剤師に確認する

避ける成分

外箱の「してはいけないこと」または「相談すること」に胃潰瘍・胃炎の記載がある製品は、購入前に必ず薬剤師へ相談してください。

胃粘膜を傷つける恐れがある成分(NSAIDs)

  • イブプロフェン(胃粘膜を傷つけ、潰瘍が悪化する恐れがある)
  • ロキソプロフェン(同上)
  • アスピリン(同上・特に胃への刺激が強い傾向がある)
  • ナプロキセン(胃粘膜への影響が出る恐れがある)

🧑‍⚕️ 特に相談

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の既往がある
  • 現在PPIやH2ブロッカーを服用中
  • 逆流性食道炎の治療中

現場から|ドラッグストアでよく聞かれる相談

相談: 頭痛薬を選んでいた方の処方薬を確認すると、PPIが入っていた。「胃の調子はいかがですか?」と聞くと、「逆流性食道炎で薬を飲んでいます」とのこと。また別の方では、痛み止めを選んでいる途中で「そういえば昔、胃潰瘍をやったことがあって…」と話してくれた。

迷い: 胃薬を飲んでいることと、痛み止めの成分の関係を意識していなかった。昔の胃潰瘍が今も関係するとは思っていなかった。

結論: 両方のケースとも、NSAIDsは胃粘膜への影響が出る恐れがあるため避ける方が安全と説明。アセトアミノフェン単剤を案内した。


胃が弱い人が痛み止めで注意すべき理由

市販の頭痛薬・解熱鎮痛薬に多く使われているNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を抑える作用があります。この結果、胃粘膜が傷つきやすくなり、胃炎・胃潰瘍・消化管出血につながる恐れがあります

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の既往がある方や、現在胃炎・逆流性食道炎の治療中の方は、胃粘膜がもともと傷つきやすい状態にあるため、NSAIDsの影響が出やすい傾向があります。

「昔に治った胃潰瘍だから大丈夫」という認識が症状の再燃につながることがあります。

空腹時の服用は特に注意

NSAIDsは食後に服用することで胃への影響を多少軽減できる傾向がありますが、胃が弱い方は食後であっても影響が出る恐れがあります。


外箱で確認する場所は2つだけ

  1. 「してはいけないこと」欄:「胃潰瘍の方」と書かれている製品は避ける
  2. 「相談すること」欄:「胃炎・胃潰瘍の既往がある方」の記載がある場合は薬剤師に確認する

成分名を確認したい場合は「有効成分」欄を見てください。イブプロフェン・ロキソプロフェン・アスピリン(アセチルサリチル酸)が入っていないかチェックしてください。


避けるべき成分と理由(一言解説)

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):胃粘膜を傷つける恐れがある

市販の頭痛薬・生理痛薬・解熱鎮痛薬に最もよく使われる成分群です。胃粘膜保護作用を持つプロスタグランジンの産生を抑えるため、胃が弱い方では影響が出やすい傾向があります。

  • イブプロフェン:市販の頭痛薬・生理痛薬に広く使われる。胃への影響が出る恐れがある
  • ロキソプロフェン:同様に広く使われる。胃粘膜への影響が出る恐れがある
  • アスピリン(アセチルサリチル酸):胃への刺激が特に強い傾向がある。胃が弱い方は特に注意
  • ナプロキセン:市販薬に含まれることがある。胃粘膜への影響が出る恐れがある

薬剤師メモ: PPIやH2ブロッカーが処方薬に入っている方に声をかけると、逆流性食道炎や胃炎の治療中であることが分かるケースがよくあります。「胃の薬を飲んでいる」=「胃が弱い可能性がある」という視点で確認するようにしています。また、「昔、胃潰瘍をやったことがある」という既往は、最初から話してくれないことが多いです。痛み止めを選んでいる途中で話してくれるパターンが多いため、成分を確認する前に一声かけることが大切です。


買うなら何を選ぶか

アセトアミノフェン単剤を優先する

胃が弱い方にはアセトアミノフェン単剤が最も選びやすい成分です。NSAIDsのような胃粘膜保護作用への影響が少なく、胃への直接的な刺激も少ない傾向があります。

用法用量を守って使用し、長期・頻回の使用は避けてください。

NSAIDsを検討する場合は自己判断しない

アセトアミノフェンで効果が不十分な場合でも、胃潰瘍や胃炎の既往がある方では自己判断でNSAIDsを選ばない方が安全です。胃粘膜保護成分が配合された製品があっても、それで胃への影響がなくなるわけではありません。どうしても必要な場合は薬剤師に確認してください。

空腹時は避ける

NSAIDsを含む市販薬は必ず食後に服用してください。空腹時の服用は胃への影響が出やすくなる傾向があります。


薬剤師に伝える3点セット

1. 処方薬の一覧または薬袋

PPIやH2ブロッカーが入っているかどうかが分かると、胃の状態を把握する手がかりになります。

2. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の既往

「昔やったことがある」という情報も成分選択に影響します。いつ頃のことか分かれば教えてください。

3. 痛みの種類と頻度

頭痛・生理痛・関節痛など、痛みの種類と頻度が分かると最適な成分を選びやすくなります。


よくある質問

Q. 食後に飲めばNSAIDsは胃が弱い人でも使えるか?

食後服用で胃への影響を軽減できる傾向はありますが、胃潰瘍の既往がある方・現在治療中の方は食後であっても影響が出る恐れがあります。アセトアミノフェン単剤を優先してください。

Q. PPIやH2ブロッカーを飲んでいれば胃が守られているのでは?

PPIやH2ブロッカーは胃酸の分泌を抑える薬ですが、NSAIDsによる胃粘膜への影響をすべて防げるわけではありません。治療中であってもNSAIDsの使用は慎重に判断してください。

Q. 胃が痛くなってきたら市販薬でよいか?

NSAIDsを服用中に胃の痛み・黒い便・吐血などの症状が出た場合は、すぐに服用を中止してかかりつけ医を受診してください。


受診・相談の目安

すぐに受診

  • 黒い便・吐血が出た(消化管出血の可能性があります)
  • 胃の強い痛みが急に出た
  • NSAIDsを服用中に胃の症状が悪化した

かかりつけ医に相談

  • 市販薬を使いたいが、どれが安全か分からない
  • 痛みが頻繁に起きていて、市販薬を繰り返し使っている

薬剤師に相談

  • アセトアミノフェンを使ってよいか確認したい
  • NSAIDsを検討してよいか確認したい
  • 胃粘膜保護成分配合製品を含めて相談したい

まとめ:棚前で使える判断フロー

頭痛・痛みがあって市販の痛み止めを選ぼうとしている
↓
胃潰瘍・胃炎・逆流性食道炎の既往または治療中
↓
まずアセトアミノフェン単剤を選ぶ

アセトアミノフェンで効果が不十分な場合
└── 胃粘膜保護成分配合製品であっても自己判断せず、薬剤師に確認してから選ぶ
    └── 必ず食後に服用する

服用中に胃の痛み・黒い便・吐血が出た
└── すぐに服用を中止してかかりつけ医を受診する

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この記事の根拠

1. PMDA 一般用医薬品 添付文書(イブプロフェン配合製品) イブプロフェンを含む市販薬の添付文書には、「してはいけないこと」の欄に胃潰瘍の方への注意、また副作用欄に胃腸出血・胃部不快感・胃痛・消化性潰瘍などの記載があります。本記事の「避ける成分」はこの記載に基づいています。

参照:PMDA 添付文書(イブプロフェン配合 OTC 製品)

2. 厚生労働省「かぜ薬等の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について」 同通知の別添には解熱鎮痛薬の使用上の注意が収載されており、イブプロフェン含有製剤などに記載すべき副作用項目や注意事項の枠組みが示されています。外箱や添付文書の注意文言はこの通知に基づいています。

参照:厚生労働省 薬食安発・薬食審査発(平成27年4月)― 解熱鎮痛薬セクション


この記事は薬剤師が執筆・監修しています。個別の症状や服用中の薬については、かかりつけの薬剤師または医師にご相談ください。

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