この記事を読んでほしい人
高齢の家族の熱中症が心配な方、または高齢の方ご自身が水分補給や熱中症対策について迷っている方
冒頭3行結論
✅ 基本の対策 こまめな水分補給・室温管理・体調変化への早めの対応が基本。「のどが渇いていなくても飲む」意識が特に重要。
❌ 避けたい思い込み
- 「経口補水液をたくさん飲めば安心」:心疾患・腎機能低下がある方は過剰摂取に注意が必要
- 「涼しい場所に移ったから安心」:高齢者は体温調節機能が低下しており、症状の回復に時間がかかることがある
🧑⚕️ すぐ救急(119番)が必要なケース
- 意識がない・呼びかけに反応しない
- けいれんしている
- 自分で水分を飲めない状態
高齢者が熱中症になりやすい理由

高齢になると、次の要因から熱中症リスクが高まります。
体温調節機能の低下 加齢により汗をかく機能・皮膚の血流調節機能が低下し、体に熱がこもりやすくなります。
口渇感の低下 高齢者は脱水が進んでいても「のどが渇いた」と感じにくくなります。気づかないうちに脱水が進む「隠れ脱水」が起きやすいのが特徴です。
体内水分量の低下 加齢により筋肉量が減ることで体内の水分量が減り、少しの水分喪失でも影響を受けやすくなります。
薬の影響 利尿薬(高血圧・心不全の治療に使われることが多い)を服用している方は、尿から水分が出やすく脱水しやすい状態になっています。暑い時期は特に注意が必要です。
熱中症の症状と重症度
日本救急医学会の熱中症重症度分類に基づくと、熱中症の症状は3段階に分けられます。
Ⅰ度(軽症) めまい・立ちくらみ・大量発汗など。涼しい場所で休んで水分補給することで多くは改善します。
Ⅱ度(中等症) 頭痛・吐き気・倦怠感・体温上昇・体がぐったりする。自力での水分補給が難しくなることがあり、早めの受診が必要です。
Ⅲ度(重症) 意識障害・けいれん・自力で水分摂取できない・高体温。すぐに救急(119番)が必要です。
経口補水液・スポーツドリンク・水の違い
経口補水液
脱水症のための食事療法(水・電解質補給)を目的とした製品です。熱中症・発熱・下痢などで脱水が疑われるときの水・電解質補給に向いています。塩分と糖分のバランスが腸からの吸収に最適化されています。
脱水が疑われるときの水・電解質補給に向くもので、日常からたくさん飲み続けるものではありません。
スポーツドリンク
日常の発汗時の水分補給に広く使われますが、糖分が多め・塩分は経口補水液より少なめです。軽い発汗の補給には使われることがありますが、経口補水液ほどの脱水対応力はありません。
水
日常の基本的な水分補給として適しています。ただし大量発汗が続く場合は水だけでは塩分が補えないため、食事からの塩分補給や適度なスポーツドリンクの併用が必要になることがあります。
経口補水液の飲みすぎに注意が必要な人
経口補水液には塩分(ナトリウム)とカリウムが含まれています。心疾患・腎機能低下・高血圧がある方では、飲みすぎることで体に負担がかかる恐れがあります。
- 心疾患(心不全・弁膜症など)がある方:水分・塩分過剰で心臓への負担が増え、浮腫や息苦しさが悪化する恐れがある
- 腎機能が低い方・透析中の方:水分・ナトリウム・カリウムの排泄が難しく、過剰摂取でバランスが崩れる恐れがある
- 高血圧がある方:ナトリウムの過剰摂取で血圧が上昇する恐れがある
持病がある方は「どのくらい飲んでいいか」をあらかじめかかりつけ医に確認しておくことが適切です。詳しくは別記事で解説しています。
日常の水分補給のタイミング
高齢者は「のどが渇いてから飲む」では遅いことがあります。次のタイミングを意識してこまめに補給してください。
- 起床時
- 食事のとき(朝・昼・夕)
- 入浴前後
- 就寝前
- 外出前・外出中
一度に大量に飲むより、少量をこまめに飲む方が体への負担が少なく吸収されやすいです。
受診を考えるライン
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| 意識がない・けいれん・自分で水分を飲めない | すぐ救急(119番) |
| 頭痛・吐き気・体温上昇・ぐったりする | 早めに受診 |
| めまい・大量発汗・立ちくらみ | 涼しい場所で休んで水分補給。改善しなければ受診 |
| 涼しい場所で休んでも改善しない | 受診 |
ドラッグストアでよく聞かれる相談

相談:「母が少し顔が赤くてぐったりしている。経口補水液を買えばいいか」
迷い:市販の経口補水液で対応できるか、受診すべきか分からない
結論:顔が赤い・ぐったりしているのは熱中症のⅡ度以上の可能性がある。まず涼しい場所に移動して体を冷やし、意識があれば水分補給。症状が改善しない・悪化する場合は受診を優先する。意識がない・けいれんがある場合はすぐ救急(119番)
関連記事
- 心疾患・腎機能が低い人の熱中症対策|水分補給の注意点とかかりつけ医への相談ポイントを薬剤師が解説
- 親の熱中症が心配なとき|家族が知っておきたい受診サインと自宅でできる対応を薬剤師が解説
- 腎機能が低い人に市販の便秘薬は使っていい?酸化マグネシウムの注意点を薬剤師が解説
この記事の根拠
1. 環境省 熱中症予防情報サイト 高齢者は体温調節機能の低下・口渇感の低下・体内水分量の減少により熱中症になりやすいとされています。
2. 日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン 熱中症はⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分類されており、意識障害・けいれん・高体温はⅢ度(重症)のサインとされています。
3. 厚生労働省 熱中症対策 利尿薬など一部の薬は脱水を引き起こしやすく、熱中症のリスクを高める可能性があるとされています。
この記事は薬剤師が執筆・監修しています。個別の症状や服用中の薬については、かかりつけの薬剤師または医師にご相談ください。

