高齢者に市販の胃腸薬は使っていい?胃薬・整腸薬の違いと注意点を薬剤師が解説

70代の高齢者がドラッグストアの棚の前で胃腸薬を選ぼうとして迷っている様子のイラスト 持病がある方の市販薬選び

この記事を読んでほしい人

高齢の家族に市販の胃腸薬を選んであげたい方、または高齢の方ご自身が胃の不調に市販薬を使おうか迷っている方


冒頭3行結論

買うなら 症状に合った成分に絞って選ぶ。胃痛・胸やけには制酸薬やH2ブロッカー、胃もたれ・食欲不振には消化酵素、腸の調子を整えるには整腸薬が候補になりやすい。

避けたい使い方

  • H2ブロッカー(ファモチジンなど)を腎機能が低い方が自己判断で使い続ける
  • 複数の症状に対応しようと成分が多い総合胃腸薬を選ぶ

🧑‍⚕️ 相談が特に必要なケース

  • 腎機能が低いと言われている方・透析を受けている方
  • 複数の薬を服用中の方
  • 胃の不調が2週間以上続いている方

市販の胃腸薬の種類と主な成分

市販の胃腸薬は大きく4種類に分けられます。

制酸薬

胃酸を中和して胃痛・胸やけを和らげる成分です。

  • 炭酸水素ナトリウム(重曹)
  • 炭酸マグネシウムなどのマグネシウム含有制酸成分(一部の胃腸薬には、マグネシウムを含む制酸成分が配合されています)
  • 水酸化アルミニウム

胃痛・胸やけ・胃酸過多に対応します。ただし炭酸マグネシウム・酸化マグネシウム含有製品は、腎機能が低い方では注意が必要です。

H2ブロッカー

胃酸の分泌を抑える成分です。

  • ファモチジン(ガスター10など)

胃痛・胸やけ・胃酸過多に効果があります。腎臓から排泄されるため、腎機能が低い方では成分が蓄積する恐れがあります。

消化酵素・健胃成分

消化を助けて胃もたれ・食欲不振を改善する成分です。

  • タカヂアスターゼ
  • リパーゼ
  • ビオジアスターゼ

食べ過ぎ・飲み過ぎ・胃もたれに対応します。腎機能への直接の影響は少ないとされています。

整腸成分

腸内環境を整えて下痢・便秘を改善する成分です。

  • ビフィズス菌・乳酸菌
  • 酪酸菌

整腸薬は胃の痛みや胸やけには効果がありません。症状に合わせて選ぶことが大切です。


H2ブロッカーが高齢者で注意になる理由

70代の高齢者がぼんやりした様子でテーブルに座り、50代の家族が心配そうに寄り添っているイラスト

H2ブロッカー(ファモチジンなど)は胃酸を抑える効果が高い一方で、高齢者では次の点に注意が必要です。

腎機能低下では成分が蓄積する恐れがある ファモチジンは主に腎臓から排泄されます。腎機能が低下していると排泄が遅れ、血中濃度が高くなる恐れがあります。

せん妄・混乱のリスク H2ブロッカーは脳に影響を及ぼす場合があり、高齢者ではせん妄・混乱が起きることがあります。2023年版AGS Beers Criteriaでも、H2ブロッカーはせん妄のある高齢者やせん妄リスクが高い場面で注意が必要な薬として挙げられています。

腎機能が低い方のH2ブロッカーの注意点は、別記事で詳しく解説しています。


制酸薬の注意点

炭酸マグネシウム・酸化マグネシウム含有製品 腎機能が低い方では、マグネシウムが体内に蓄積する恐れがあります。便秘薬と同様に、腎機能低下がある方は購入前に薬剤師へ相談してください。

他の薬との飲み合わせ 制酸薬は一部の抗菌薬・骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤など)の吸収を妨げる恐れがあります。複数の薬を服用中の方は、お薬手帳を持参して薬剤師に確認してください。


高齢者で特に注意が必要な人

  • 腎機能が低い方・透析を受けている方:H2ブロッカーの蓄積・制酸薬のマグネシウム蓄積の恐れがある
  • 複数の薬を服用中の方:飲み合わせの確認が必要
  • 高齢者全般:せん妄リスク・脱水・転倒につながる症状に注意

受診を考えるライン

次のいずれかに当てはまる場合は、市販薬で様子を見るより先に医療機関への相談が適切です。

  • 吐血・黒色便(タール便)が出ている
  • 体重減少・食欲低下が2週間以上続いている
  • 市販薬を使っても改善しない状態が2週間以上続く
  • 胃の不調に加えてめまい・動悸・息切れがある
  • 抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)を服用中で胃の不調がある

ドラッグストアでよく聞かれる相談

70代の高齢者が薬局カウンターで白衣の薬剤師に胃腸薬について相談している様子のイラスト

相談:「胃が痛くて、ガスターと胃腸薬どちらを買えばいいか分からない」

迷い:H2ブロッカーと制酸薬の違いが分からない、どちらが自分に向いているか

結論:胃痛・胸やけが主な症状ならH2ブロッカーまたは制酸薬が候補。ただし腎機能が低い場合はH2ブロッカーを自己判断で使い始める前に薬剤師に相談するとよい


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この記事の根拠

1. American Geriatrics Society 2023 Updated AGS Beers Criteria® H2ブロッカーは、せん妄のある高齢者やせん妄リスクが高い場面で注意が必要な薬として挙げられています。高齢者では、腎機能低下などを背景に中枢神経系副作用(混乱・せん妄など)に注意が必要です。

参照:American Geriatrics Society 2023 Updated AGS Beers Criteria® (J Am Geriatr Soc. 2023;71(7):2052-2081)

2. PMDA 一般用医薬品 添付文書 ファモチジンを含む一般用医薬品の添付文書には、腎臓病がある方を相談対象とする記載があります。炭酸マグネシウム・酸化マグネシウムを含む制酸薬の添付文書にも、腎臓病がある方を相談対象とする記載があります。

参照:PMDA 添付文書検索(一般用医薬品)


この記事は薬剤師が執筆・監修しています。個別の症状や服用中の薬については、かかりつけの薬剤師または医師にご相談ください。

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