高齢者に市販の睡眠改善薬は使っていい?ジフェンヒドラミンの注意点と受診目安を薬剤師が解説

夜眠れない高齢者と心配する家族のイラスト 持病がある方の市販薬選び

この記事を読んでほしい人 高齢の家族に市販の睡眠改善薬を選んであげたい方、または高齢の方ご自身が寝つきの悪さに市販薬を使おうか迷っている方


冒頭3行結論

まず確認したいこと 高齢者が市販の睡眠改善薬を使う場合は、自己判断より先に薬剤師への相談を優先してください。どうしても使う場合でも短期間・最小限にとどめ、翌朝のふらつきや混乱がないか必ず確認してください。

避ける成分

外箱の「してはいけないこと」または「相談すること」を確認し、高齢者への注意や前立腺・緑内障に関する注意がある製品は、購入前に薬剤師へ相談してください。注意文言は製品によって異なります。

ジフェンヒドラミン(市販睡眠改善薬の主成分)

  • 抗コリン作用により、高齢者では翌朝のふらつき・混乱・口渇・排尿困難が出る恐れがある
  • 2023年版AGS Beers Criteriaで高齢者に避けるべき薬として収載されている

🧑‍⚕️ 特に相談

  • 認知症の診断がある
  • 転倒の経験がある・骨折リスクが高い
  • 前立腺肥大・緑内障の治療中
  • 複数の薬を服用中

現場から|ドラッグストアでよく聞かれる相談

相談: 「最近、父が夜眠れないと言っていて、市販の睡眠改善薬を買ってあげたいんですが」と来店した方に詳しく聞くと、「前立腺肥大で泌尿器科にも通っています」とのこと。

迷い: 眠れないなら睡眠改善薬を飲ませれば解決すると思っていた。持病との関係は考えていなかった。

結論: 市販の睡眠改善薬の主成分はジフェンヒドラミンで、抗コリン作用により前立腺肥大の方では排尿困難が悪化する恐れがある。また高齢者では翌朝まで眠気が残り、ふらつき・転倒のリスクとなる恐れがある。購入を一度止めてもらい、かかりつけ医に不眠の相談をするよう勧めた。


高齢者に市販の睡眠改善薬で注意すべき理由

市販の睡眠改善薬は、抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン)の眠気という副作用を利用した薬です。病院で処方される睡眠薬や不眠治療薬とは作用の仕組みが異なります。

高齢者では次の理由から、特に注意が必要です。

  • 薬の代謝・排泄が遅くなるため、成分が体内に残りやすい
  • 抗コリン作用の影響が若い人より出やすい
  • 翌朝まで眠気・ふらつきが残る恐れがある
  • 夜間のトイレ時に転倒するリスクが高まる恐れがある

薬剤師メモ: 「ドラッグストアで売っているから安全」と思われがちですが、市販の睡眠改善薬は高齢者への使用に注意が必要な成分を含んでいます。現場でも「親に飲ませたら朝からぼんやりしていた」という相談が来ることがあります。

認知症・転倒歴がある方は特に注意

認知症がある方や転倒歴がある方では、抗コリン作用や眠気の影響が出やすく、混乱やふらつきが強まる恐れがあります。このような方への使用は、必ず事前に医師または薬剤師に相談してください。


外箱で確認する場所は2つだけ

  1. 「相談すること」欄を確認し、高齢者への注意・前立腺肥大・緑内障・排尿困難に関する注意が記載されている製品は、薬剤師に確認してから選ぶ
  2. 「有効成分」欄:ジフェンヒドラミン塩酸塩が含まれているか確認する。市販の睡眠改善薬ではジフェンヒドラミンを主成分とする製品が多いため、必ず有効成分欄を確認してください。

「ノーブランド」「安価」「自然派」と見える製品でも、成分が同じ場合があります。イメージだけで判断せず、有効成分欄を確認してください。


注意が必要な成分と理由(一言解説)

ジフェンヒドラミン(主役)

市販睡眠改善薬の主成分です。第一世代抗ヒスタミン薬で、眠気を引き起こす作用を利用しています。ただし高齢者では次の点に注意が必要です。

  • 翌朝まで残る眠気・ふらつき:夜間トイレ時の転倒リスクとなる恐れがある
  • 抗コリン作用:口渇・排尿困難・便秘・混乱が出る恐れがある
  • 認知機能への影響:高齢者では混乱やぼんやり感が出る恐れがある
  • 前立腺肥大への影響:抗コリン作用により排尿困難が悪化する恐れがある
  • 緑内障への影響:緑内障のある方では症状に影響する恐れがあるため、使用前に確認が必要

2023年版AGS Beers Criteriaでは、第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン含む)は高齢者で強い抗コリン作用により混乱・転倒・排尿困難などのリスクから避けるべき薬として収載されています。

その他確認が必要な成分

製品によっては他成分を含む場合もあるため、成分の重複がないか確認してください。


使う前に確認すること

服用中の薬との飲み合わせ

抗コリン作用を持つ他の薬(一部の過活動膀胱治療薬・抗うつ薬・胃腸薬など)と重なると、抗コリン作用が強くなる恐れがあります。お薬手帳を薬剤師に見せて確認してください。

認知症・転倒歴の有無

認知症の診断がある・転倒経験があるという情報は、薬剤師が成分の使用可否を判断するうえで重要です。購入前に必ず伝えてください。

連用すると効果が出にくくなる恐れがある

市販の睡眠改善薬は、抗ヒスタミン成分への耐性が生じやすく、連用すると効果が出にくくなる恐れがあります。病院で処方される睡眠薬とは仕組みが異なるため、「毎晩飲めば眠れる」という使い方は想定されていません。添付文書でも連用は避けるよう示されています。

不眠が続く場合や、2週間以上改善しない場合は、市販薬での対処を続けず受診を検討してください。


薬剤師に伝える3点セット

1. 飲んでいる薬の一覧(特に前立腺・緑内障・認知症関連の薬)

抗コリン作用が重なる薬がないか確認するために、お薬手帳または薬の名前を伝えてください。

2. 認知症・転倒・骨折の有無

これらがある場合は、薬剤師から受診を勧める可能性が高くなります。

3. 不眠の続いている期間と日中の状態

いつから・どんな眠れなさか(寝つけない・途中で目が覚める・早朝覚醒)・日中の眠気はあるかを伝えてください。2週間以上続く場合は市販薬より受診が先です。


よくある質問

Q. 「自然派」「ハーブ系」と書いてある睡眠改善薬なら高齢者でも安全か?

成分欄を必ず確認してください。イメージや表示だけでは成分は判断できません。高齢者が使う場合は、生薬・ハーブ中心の製品であっても、購入前に薬剤師へ確認することをおすすめします。

Q. 一度だけなら飲ませても大丈夫か?

絶対にダメとは言い切れませんが、高齢者では一回の服用でも翌朝のふらつき・混乱が出る恐れがあります。特に認知症・転倒歴・前立腺肥大・緑内障がある場合は一回でも注意が必要です。使用前に必ず薬剤師に相談してください。

Q. 病院で処方してもらう睡眠薬と何が違うのか?

市販の睡眠改善薬は、抗ヒスタミン成分の眠気という副作用を利用したものです。病院で処方される不眠治療薬とは作用の仕組みが異なります。連用による耐性もつきやすく、不眠症の治療薬としては位置づけられていません。不眠が続く場合は受診して適切な治療を受けることが重要です。


受診・相談の目安

すぐに受診

  • 市販の睡眠改善薬を飲んで急に様子がおかしくなった・混乱している
  • ふらつきがひどく転倒した・転倒しそうになった
  • 尿が出にくくなった・出なくなった

数日以内に受診

  • 不眠が2週間以上続いている
  • 日中も強い眠気・ぼんやり感が続いている
  • 市販薬を使っても改善しない・効かなくなってきた

薬剤師に相談

  • 高齢の家族に何を選べばよいかわからない
  • 飲んでいる薬と睡眠改善薬の飲み合わせを確認したい
  • 認知症・前立腺肥大・緑内障があるが使えるか確認したい

棚前で使える判断フロー

高齢の家族に市販の睡眠改善薬を選ぼうとしている
↓
まず確認する
├── 認知症の診断がある → 使用前に必ず医師または薬剤師に相談
├── 転倒・骨折歴がある → 使用前に必ず医師または薬剤師に相談
├── 前立腺肥大・緑内障の治療中 → 使用前に必ず医師または薬剤師に相談
└── 上記なし → 薬剤師に確認したうえで短期間・最小限で検討

不眠が2週間以上続いている
└── 市販薬より受診を優先する

服用後に様子がおかしい・ふらつく・混乱している
└── すぐに服用を中止してかかりつけ医に連絡する

連用して効かなくなってきた
└── 市販薬の継続をやめて受診する

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この記事の根拠

1. American Geriatrics Society 2023 Updated AGS Beers Criteria® 第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン含む)は、高齢者で避けるべき薬として収載されており、強い抗コリン作用による混乱・転倒・排尿困難などのリスクが示されています。本記事の「注意が必要な成分」および「特に相談」の記載はこの基準に基づいています。

参照:American Geriatrics Society 2023 Updated AGS Beers Criteria® (J Am Geriatr Soc. 2023;71(7):2052-2081)

2. PMDA 一般用医薬品 添付文書(ジフェンヒドラミン配合睡眠改善薬) ジフェンヒドラミンを含む市販の睡眠改善薬の添付文書には、緑内障・前立腺肥大・排尿困難のある方を相談対象とすること、連用しないこと、服用後のふらつきへの注意が記載されています。本記事の「外箱で確認する場所」「使う前に確認すること」「受診・相談の目安」の記載はこの添付文書に基づいています。

参照:PMDA 添付文書検索(一般用医薬品)


この記事は薬剤師が執筆・監修しています。個別の症状や服用中の薬については、かかりつけの薬剤師または医師にご相談ください。

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