この記事を読んでほしい人 高齢の家族の咳がひどく、市販の咳止めを選びたいと考えている方
冒頭3行結論
✅ 買うなら 成分がシンプルな鎮咳薬単剤または去痰薬単剤を優先する。総合かぜ薬・総合咳止めは成分が複合しやすく、高齢者には慎重な確認が必要
❌ 避ける成分
外箱の「してはいけないこと」または「相談すること」に高齢者への注意がある製品は、購入前に必ず薬剤師へ相談してください。
抗コリン作用が強い抗ヒスタミン成分(せん妄・転倒のリスクがある)
- d-クロルフェニラミン(抗コリン作用により混乱・ふらつきの恐れがある)
- ジフェンヒドラミン(抗コリン作用により高齢者で影響が出やすい)
- クレマスチン(抗コリン作用により認知機能・平衡感覚に影響する恐れがある)
そのほか確認が必要な成分
- コデイン・ジヒドロコデイン(眠気・ふらつきが出る恐れがある)
- dl-メチルエフェドリン(動悸・不眠が出る恐れがある)
🧑⚕️ 特に相談
- 認知症の診断がある
- 転倒の経験がある・骨折リスクが高い
- 複数の薬を服用中
現場から|ドラッグストアでよく聞かれる相談
相談: 「母の咳がひどくて、何かいい薬はありませんか?」と来店した方に詳しく聞くと、「先週から市販の総合咳止めを飲ませているんですが、なんか様子がおかしくて…」とのこと。
迷い: 咳に効く薬なら何でも同じだと思っていた。高齢の親に市販の総合咳止めを選ぶことのリスクを意識していなかった。
結論: 飲んでいた総合咳止めにd-クロルフェニラミンが含まれていた。抗コリン作用で混乱・ふらつきが出る恐れがあることを説明し、服用を中止してもらった。咳の原因確認のため耳鼻科または内科への受診も勧めた。
高齢者に市販の咳止めで注意すべき理由
市販の総合咳止め・総合かぜ薬には、咳・鼻水・発熱などをまとめて抑えるために複数の成分が配合されています。その中でも抗ヒスタミン成分は、鼻水などの症状を抑える目的で総合かぜ薬や一部の総合鎮咳去痰薬に配合されていますが、抗コリン作用という副作用があります。
高齢者では抗コリン作用の影響が出やすく、混乱・興奮・幻覚(せん妄)や、ふらつき・転倒につながる恐れがあります。夜間のトイレ時に転倒して骨折、というリスクは特に深刻です。
若い人では問題になりにくくても、高齢者では少量・短期間の使用でも影響が出ることがあります。
認知症がある方は特に注意
認知症の方は抗コリン作用の影響が出やすく、症状が急激に悪化するように見えることがあります。「認知症が急に進んだ」と感じたら、市販薬の影響を疑う視点も重要です。
薬剤師メモ: 「親の様子がおかしい」と来店される家族の方から話を聞くと、総合咳止めや総合かぜ薬を数日前から飲ませていた、というケースがあります。抗ヒスタミン成分の抗コリン作用でせん妄のような状態になることがあり、現場で実際に見たことがあります。高齢者に市販薬を選ぶときは「効くかどうか」だけでなく「何が入っているか」の確認が特に重要です。
外箱で確認する場所は2つだけ

- 「相談すること」欄と「有効成分」欄を確認し、高齢者で影響が出やすい成分が含まれる製品は薬剤師に確認する
- 「有効成分」欄:d-クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミン・クレマスチンが入っていないかチェックする
「総合」とつく製品(総合かぜ薬・総合咳止め)は複数の成分が配合されていることが多く、成分欄の確認が特に重要です。
注意が必要な成分と理由(一言解説)
抗コリン作用が強い抗ヒスタミン成分(主役)
高齢者の市販咳止めで最も注意すべき成分群です。鼻水・咳を抑える目的で配合されていますが、抗コリン作用が高齢者のせん妄・転倒リスクにつながる恐れがあります。
- d-クロルフェニラミン:総合かぜ薬・鼻炎薬・咳止めに広く使われる。高齢者では混乱・ふらつきが出る恐れがある
- ジフェンヒドラミン:抗コリン作用が強い。高齢者への影響が出やすい成分
- クレマスチン:認知機能・平衡感覚に影響する恐れがある
コデイン・ジヒドロコデイン(補足)
中枢性の鎮咳成分です。眠気・ふらつきが出る恐れがあり、高齢者では転倒リスクとして確認が必要です。ただし高齢者で長期使用するケースはそれほど多くなく、主に成分確認の対象として意識してください。
dl-メチルエフェドリン(補足)
交感神経を刺激して気管支を広げる成分です。動悸・不眠が出る恐れがあります。高齢者では心臓への影響が出やすいため確認が必要ですが、これが主な問題になるケースはそれほど多くありません。
買うなら何を選ぶか
成分がシンプルな単剤を選ぶ
高齢者の咳に市販薬を使う場合、成分がシンプルな単剤が基本です。
- 咳だけが主症状:鎮咳薬単剤(デキストロメトルファン等)
- 痰が絡んでいる:去痰薬単剤(カルボシステイン等)またはカルボシステイン+ブロムヘキシン配合
総合かぜ薬・総合咳止めは必要のない成分まで入っていることが多く、高齢者には成分がシンプルなものを優先してください。
咳が2週間以上続く場合は受診を優先する
高齢者の長引く咳は、肺炎・心不全・逆流性食道炎・咳喘息など市販薬では対応できない原因が隠れていることがあります。市販薬で様子を見る前に受診を検討してください。
薬剤師に伝える3点セット

1. 本人が飲んでいる薬の一覧
複数の薬を服用中の高齢者では、市販薬との飲み合わせ確認が特に重要です。
2. 認知症・転倒の有無
認知症の診断がある・転倒経験があるという情報は、成分選択に直接影響します。
3. 咳の続いている期間と様子
いつから・どんな咳か・発熱・痰はあるかを伝えてください。2週間以上続く咳は受診が先です。
よくある質問
Q. 総合かぜ薬ではなく咳止めシロップなら高齢者でも大丈夫か?
シロップタイプでも成分は同じです。d-クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミン等が含まれていれば同じリスクがあります。必ず「有効成分」欄を確認してください。
Q. 「様子がおかしい」と感じたらまず何をすべきか?
市販薬を服用中であれば、まず服用を中止してください。その後、かかりつけ医または薬剤師に状況を伝えてください。認知症の急激な悪化のように見える場合も、薬の影響の可能性があります。
Q. 高齢者の咳に漢方薬は安全か?
漢方薬にもマオウ(麻黄)を含むものがあり、動悸・不眠・血圧上昇の恐れがあります。「漢方だから安全」という認識は確認が必要です。購入前に薬剤師に相談してください。
受診・相談の目安
すぐに受診
- 高熱・呼吸困難・胸痛を伴う咳
- 市販薬を飲んで急に様子がおかしくなった
- 血痰が出た
数日以内に受診
- 咳が2週間以上続いている
- 市販薬を止めたが混乱・ふらつきが続いている
薬剤師に相談
- 高齢の家族に何を選べばよいか分からない
- 飲んでいる薬と市販薬の飲み合わせを確認したい
まとめ:棚前で使える判断フロー
高齢の家族の咳に市販薬を選ぼうとしている
↓
まず外箱「有効成分」欄を確認する
├── d-クロルフェニラミン含む → 選ばない
├── ジフェンヒドラミン含む → 選ばない
├── クレマスチン含む → 選ばない
└── 上記を含まない単剤 → 薬剤師に確認して選ぶ
咳が2週間以上続いている
└── 市販薬より受診を優先する
服用後に様子がおかしい・ふらつく
└── すぐに服用を中止してかかりつけ医に連絡する
関連記事
- 夜だけ咳が強いとき|市販薬で様子を見るラインと受診目安
- 高血圧の薬を飲んでいる人の鼻づまり薬|避けたい成分と選び方
- 眠気が心配な人の花粉症薬|成分の選び方と運転の注意点
- 【成分辞書】抗コリン作用とは|排尿・眼圧・認知機能への影響
この記事の根拠
1. AGS 2023 Beers Criteria(米国老年医学会 高齢者に不適切な薬リスト) 第一世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミン等)は、高齢者で避けるべき薬として収載されており、強い抗コリン作用による混乱・転倒・せん妄などのリスクが示されています。本記事の「避ける成分」と「せん妄・転倒リスク」の記載はこの基準に基づいています。
2. 厚生労働省「かぜ薬等の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について」 同通知の別添には、一部のかぜ薬・鎮咳去痰薬成分において高齢者を相談対象とする注意事項の枠組みが示されています。外箱や添付文書の注意文言はこの通知に基づいています。
3. PMDA 一般用医薬品 添付文書(ジフェンヒドラミン配合製品・補助資料) ジフェンヒドラミンを含む市販薬の添付文書には、高齢者で眠気が強く出たり、逆に神経が高ぶることがある旨の記載があります。本記事の成分説明の補助資料として参照しています。
参照:PMDA 添付文書(ジフェンヒドラミン配合 OTC 製品)
この記事は薬剤師が執筆・監修しています。個別の症状や服用中の薬については、かかりつけの薬剤師または医師にご相談ください。

